森光子
(1920 ~ 2012)
森光子(本名:村上美津)は、1920年5月9日、京都木屋町の割烹旅館の長女として出生。周囲は旅館を継ぐものと期待していましたが、松竹少女歌劇に憧れていた美津は、母親が結核で亡くなったのを機に芸能の道に進むことを決意。従兄の映画スター・嵐寛寿郎率いる「寛プロ」に入り、1935年、「森光子」という芸名を得て14歳で映画デビューしました。
1937年、「寛プロ」から「新興キネマ」に移籍。新興キネマ時代は、40本近くの映画に出演しましたが、1941年、歌手をめざして上京。戦争中は東海林太郎ら大スターの前座歌手として日本軍慰問団に参加し、満州や東南アジアの島々を慰問。終戦の翌年、京都に戻り芸能活動を再開しますが、1949年、肺結核を患い2年半の闘病生活を送ることになります。
療養生活を終え芸能界に復帰した光子は、ラジオ、舞台だけでなく、草創期のテレビにも実験放送から出演。錚々たる関西喜劇人にもまれながら女優としての実力を身につけ、活躍の場を広げていきました。
そんな光子の舞台を偶然目にしたのが、人気劇作家であり東宝演劇の総帥だった菊田一夫でした。菊田から、東京の芸術座に誘われた光子は再び上京。
1961年、芸術座出演4作目の「放浪記」で主役の林芙美子役に抜擢されます。この時、光子41歳、長い芸能生活を経てつかんだ、念願の初主役でした。
「放浪記」の初演は異例のロングランとなり、この年の芸術祭文部大臣賞を受賞。10年後の1971年には再演が決定。以降、「放浪記」は生涯2017回の上演数を誇る、光子のライフワークとなります。
「放浪記」で実力を認められた光子は、舞台を中心に、映画、テレビで活躍。テレビでは「時間ですよ」(TBS)などのホームドラマで母親役を好演。“お母さん女優”と称されるようになりました。また、喜劇女優としてもドリフターズと長年に渡って共演するなど、芸域の広さをいかんなく発揮。さらに司会者としても様々な番組を担当。フジテレビのワイドショー「3時のあなた」では1974年から14年間に渡って司会を務めました。
晩年になっても挑戦意欲は衰えることはなく、2005年、85歳で「文化勲章」を。2009年には、俳優では初の生前授与となる「国民栄誉賞」を授与されました。
その後も、初の著書出版や、新作舞台などをこなしますが、2012年11月10日、肺炎による心不全により逝去。満92歳でした。
森光子芸能履歴表
- 1920年 (0歳)
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京都の木屋町「割烹旅館 國の家」の女将、艶の長女として誕生
- 1935年 (15歳)
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従兄弟である嵐寛寿郎の「嵐寛寿郎プロ」に入り「なりひら小僧・春霞八百八町」で茶屋の少女役として映画デビュー。その後「月形半平太」「右門捕物帖・花嫁地獄変」に出演
- 1936年 (16歳)
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映画「右門捕物帖・娘傀儡師」「破れ合羽」「御存知鞍馬天狗・宗十郎頭巾」に出演
- 1937年 (17歳)
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映画「国訛道中笠」「御存知鞍馬天狗・千両小判」に出演後、嵐寛寿郎プロが解散。新興キネマ京都撮影所に移籍し映画「決闘両国橋」「足軽大名」などに出演
- 1938年 (18歳)
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映画「剣豪荒木又右衛門」「忍術関ヶ原・猿飛佐助」「怪猫・五十三次」「怪猫・赤壁大明神」に出演
- 1939年 (19歳)
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新興キネマ演芸部旗上げ公園に参加。映画「元禄女大名」「お伊勢詣り 旅籠屋騒動」「金比羅船」「文福茶釜」「笠森おせん」に出演
- 1940年 (20歳)
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映画「続阿波の狸合戦」「黄金道中」「明治の女」に出演
- 1941年 (21歳)
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映画「荒木又右衛門・仇討ちの日」に出演。タイヘイレコードで「白衣の勇士を送る歌」を収録するも不認可になり、歌手を目指し上京
- 1942年 (22歳)
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外地慰問。朝鮮・満州の都市を巡演する。
- 1943年 (23歳)
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海軍恤兵部の派遣でシンガポール・ボルネオ・バリなどを慰問
- 1944年 (24歳)
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慰問中体調を崩し、南京の病院で「肺浸潤」と診断され帰国
- 1945年 (25歳)
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東京大空襲で中目黒の家が焼け進駐軍キャンプを巡りジャズを歌う
- 1946年 (26歳)
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京都に帰郷 日系二世の米兵リチャード・ウエムラと結婚するが、1週間後ウエムラはハワイに帰国し再会することはなかった。
- 1949年 (27歳)
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体調を崩し肺結核と診断され、サナトリウムで2年間療養する。
- 1952年 (32歳)
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NHK大阪のラジオ番組「エンタツの迷探偵」で芸能復帰
- 1953年 (33歳)
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ラジオ「お笑い三洋亭・水戸黄門漫遊機」に出演
- 1954年 (34歳)
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宝塚新芸座に特別出演 ほかラジオなとに出演 北野劇場「ワカサの新婚ボーナス騒動」「恋愛あの手この手」「蝶々の姫君街へ行く」に出演
- 1955年 (35歳)
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NHK大阪テレビドラマ「簪」に出演 ラジオの司会 北野劇場「漫才学校」「続・漫才学校」に出演
- 1957年 (37歳)
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ラジオで活躍 大阪テレビ「びっくり捕物帖」に出演人気番組となる。
- 1958年 (38歳)
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「あまから人生」に出演中菊田一夫の目にとまり、東京の芸術座へ「花のれん」に出演する。NHK「お父さんの季節」朝日放送「芽」に出演
- 1959年 (39歳)
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「喜劇王・曾我廼家五九郎」で大阪市民文化祭賞受賞。テレビディレクター岡本愛彦と結婚。芸術座「がめつい奴」に出演 毎日放送「街のどんぐり」に出演
- 1960年 (40歳)
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「がめつい奴」芸術座「がしんたれ」東京宝塚劇場「雲の上団五郎一座・最期の伝令」に出演 ラジオ「森光子ショー」
- 1961年 (41歳)
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芸術座「放浪記」にて初の主演を演じる。芸術祭文部大臣賞第7回テアトロン賞受賞。テレビドラマなどでも活躍。
- 1962年 (42歳)
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名古屋名鉄ホール「放浪記」芸術座「危ない季節」「悲しき玩具」NHK「おはなはん一代記」フジテレビ「大番」に出演 NHK紅白歌合戦で司会 映画「喜劇・駅前温泉」「喜劇・駅前飯店」
- 1963年 (43歳)
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多忙を極める。 岡本愛彦と離婚 舞台・映画・テレビドラマで活躍
- 1964年 (44歳)
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芸術座「越前竹人形」で第10回テアトロン賞受賞 東芝日曜劇場「みだれ」「三代目」「いくじなし」映画「モンローのような女」に出演
- 1965年 (45歳)
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東芝日曜劇場「時間ですよ」出演平成2年まで続くNHK「おもろい女」フジテレビ「人情話・文七元結 師走の川風」映画「大根と人参」「暖春」に出演 乳がん手術
- 1966年 (46歳)
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明治座「駅前二十年」「悪女の勲章」 新橋演舞場「佐渡島他吉の生涯」 TBSナショナル劇場「ともだち」東芝日曜劇場「天国の父ちゃんこんにちは」放送開始
- 1967年 (47歳)
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芸術座「縮図」「あかさたな」映画「惜春」「春日和」に出演
- 1968年 (48歳)
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東京宝塚劇場「まぼろしの邪馬台国」芸術座「台所太平記」出演 NHK大河ドラマ「竜馬がゆく」日本テレビ「恋しかるらん」に出演
- 1969年 (49歳)
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芸術座「千羽鶴」歌舞伎座「いくぢなし」TBS「娘すし屋繁盛記」フジテレビ「もうれつ大家族」関西テレビ「大奥 大老の遺言」に出演
- 1970年 (50歳)
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東京宝塚劇場「夫婦善哉」「浅間追分」帝国劇場「鬼平犯科帳」「風流奴物語」NTV「おふくろの味」TBS水曜劇場「時間ですよ」シリーズ化 放送作家協会賞・女性演技賞受賞
- 1971年 (51歳)
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芸術座「放浪記」再演 日本テレビ「2丁目2番地」NHK銀河ドラマ「からすなぜ泣くの」映画「女の花道」に出演
- 1972年 (52歳)
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東京宝塚劇場「常磐津森中」「恋の死神」芸術座「道頓堀」東芝日曜劇場「心」NTVグランド劇場「3丁目3番地」TBS「第14回日本レコード大賞」司会
- 1973年 (53歳)
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菊田一夫逝去 NET「じゃがいも」TBS「雪の華」映画「グァム島珍道中」に出演
- 1974年 (54歳)
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芸術座「放浪記」フジテレビ「3時のあなた」司会開始。14年間
- 1975年 (55歳)
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芸術座「安来節の女」TBS「花吹雪はしご一家」に出演
- 1976年 (56歳)
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芸術座「千三家お菊」NETポーラ名作劇場「海のある窓」に出演
- 1977年 (57歳)
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芸術座「つゆのひぬま」出演 NET森光子劇場「夫婦善哉」「青春怪談」「かあちゃん」「おかしくてやがて悲しき」テレビ朝日森光子シリーズ「かあさんの嘘」「白無垢」に出演
- 1978年 (58歳)
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芸術座「おもろい女」初演「3時のあなた」でブラジル取材 NHK紅白歌合戦司会
- 1979年 (59歳)
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「おもろい女」再演 芸術祭大賞 第17回ゴールデンアロー賞演劇賞受賞 TBS「熱愛一家LOVE」東芝日曜劇場「熱い空気」「結婚行進曲」に出演
- 1980年 (60歳)
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芸術座「雪まろげ」初演 TBS「なぜか初恋南風」東芝日曜劇場「春へ」出演
- 1981年 (61歳)
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芸術座「放浪記」を三木のり平の演出で再演 芸術選奨文部大臣賞 第7回菊田一夫演劇大賞受賞 NTV「かくれんぼ」に出演
- 1982年 (62歳)
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芸術座「新・雪まろげ 北海道編」NTV「田中丸御一同様」「春よ来い」東芝日曜劇場「夫婦ふたり」に出演 読売新聞日曜版「ふり返れば昨日のこと」連載
- 1983年 (63歳)
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中日劇場「雪まろげ」芸術座「放浪記」
- 1984年 (64歳)
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帝国劇場「花の吉原つき馬屋」「雪まろげ・山陰編」NHK紅白歌合戦司会 紫綬褒章受賞
- 1985年 (65歳)
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中日劇場「浮巣」芸術座「姥ざかり」東芝日曜劇場「花のこころ」TBS「おかあさん・たぬき屋の人々」日本テレビプロデューサー協会30周年特別賞 第36回NHK放送文化賞受賞
- 1986年 (66歳)
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中日劇場「放浪記」名古屋演劇ペンクラブ賞受賞 芸術座「木瓜の花」NHK「手のひらの虹」に出演
- 1987年 (67歳)
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東京宝塚劇場「油屋おこん」芸術座「放浪記」映画「映画女優」に出演 ラジオ「松鶴恋歌」で民放ラジオドラマ部門最優秀作品賞 第14回放送文化基金賞受賞
- 1988年 (68歳)
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日本喜劇人協会会長就任 中日劇場「油屋おこん」帝国劇場「夢の宴・女傑長尾よねの生涯」に出演 ニッポン放送「第14回ラジオチャリティーミュージクソン・24時間」パーソナリティー
- 1989年 (69歳)
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東京宝塚劇場「虹を渡るぺてん師」 芸術座「おもろい女」梅田コマ「放浪記」 ドラマ「華やかな女たち」に出演
- 1990年 (70歳)
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中日劇場・日生劇場「花霞」芸術座「放浪記」TBSドラマ「渡る世間は鬼ばかり」に出演
- 1991年 (71歳)
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帝国劇場「桜月記・女興行師吉本せい」 芸術座「雪まろげ」フジテレビ「なんだらまんだら」に出演 第32回毎日芸術賞 都民文化栄誉賞 第28回ゴールデンアロー賞 第17回菊田一夫演劇特別賞受賞
- 1992年 (72歳)
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東京宝塚劇場「桜月記 女興行師せい」FNS北海道東北公演「放浪記」TBS「かあさんはドン?」に出演 第13回松尾芸能大賞受賞 日本赤十字社社業功労賞特別表彰 勲三等瑞宝章受賞
- 1993年 (73歳)
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劇場飛天・東京宝塚劇場「夢の宴・女傑長尾よねの生涯」芸術座「恋風・昭和ブギウギ物語」 東芝日曜劇場「おんなの家」に出演
- 1994年 (74歳)
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帝国劇場「御いのち」TBSテレパック「忍ばずの女」「放浪記」FNS西日本公演に出演
- 1995年 (75歳)
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劇場飛天、東京宝塚劇場「春は爛漫」中日劇場、芸術座「流水橋」に出演 第32回ゴールデンアロー賞演劇賞大賞受賞 CDアルバム「Mitsuko Mori」発売 「第37回輝く!日本レコード大賞」企画賞受賞
- 1996年 (76歳)
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東京宝塚劇場「恋風・昭和ブギウギ物語」芸術座「放浪記」に出演「森光子スペシャルディナーショー」を新高輪ホテルにて開催
- 1997年 (77歳)
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劇場飛天・帝国劇場「深川しぐれ」新国立劇場中劇場会場公演「紙屋町さくらホテル」に出演
- 1998年 (78歳)
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日生劇場「おもろい女」帝国劇場「花迷宮」芸術座「本郷菊富士ホテル」NHK水曜ドラマ「必要のない人」に出演 第6回橋田寿賀子賞特別賞受賞
- 1999年 (79歳)
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中日劇場・帝国劇場「花も嵐も」芸術座「放浪記」に出演 浅草芸能大賞受賞
- 2000年 (80歳)
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中日劇場・帝国劇場「ビギン・ザ・ビギン」 芸術座「雪まろげ」映画「川の流れのように」に出演 第七回読売演劇大賞最優秀女優賞・大賞 第24回日本アカデミー賞主演女優賞最優秀賞受賞
- 2001年 (81歳)
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芸術座「新橋ラプソディー」中日劇場・帝国劇場「質屋の女房」映画「千年の恋・ひかる源氏物語」に出演
- 2002年 (82歳)
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芸術座「放浪記」新国立劇場「桜の園」帝国劇場「ビギン・ザ・ビギン」に出演
- 2003年 (83歳)
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帝国劇場・大阪フェスティバルホール「春は爛漫」芸術座「放浪記」に出演
- 2004年 (84歳)
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中日劇場「放浪記」芸術座「おもろい女」に出演
- 2005年 (85歳)
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第四回朝日舞台芸術賞特別賞受賞 芸術座・博多座「放浪記」帝国劇場・富山オーバードホール・中日劇場「ツキコの月・そしてタンゴ」NHK「ハルとナツ」に出演 文化勲章受賞
- 2006年 (86歳)
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博多座・梅田芸術劇場「おもろい女」帝国劇場・中日劇場「放浪記」に出演
- 2007年 (87歳)
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帝国劇場・博多座「雪まろげ」新橋演舞場「寝坊な豆腐屋」に出演 日本経済新聞にて「わたしの履歴書」を連載
- 2008年 (88歳)
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シアタークリエ・富山オーバードホール・博多座「放浪記」NHK「100年インタビュー」 大阪フェスティバルホール・中日劇場「放浪記」に出演
- 2009年 (89歳)
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5月9日の誕生日に帝国劇場「放浪記」2000回達成 国民栄誉賞受賞
- 2012年 (92歳)
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11月10日 逝去
12月7日 青山葬儀場にて本葬